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「ギャラリーの熱狂に選手も乗せられる」プロキャディ進藤大典氏がみたPGAツアー
2019年2月15日(金)午後6:52
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昨年まで松山英樹選手の専属キャディを務めていた進藤大典さん。約5年間に渡り、PGAツアーという世界最高峰のプロゴルフツアーをロープの中から見続けてきました。
その進藤さんが、CS放送ゴルフネットワークの特別番組「松山英樹を見た証言 特別編~未公開シーンとその後~(16日午前10時初回放送・再放送あり)」のなかで、貴重な経験を踏まえてPGAツアーの魅力についてお話を伺いました。
僕も日本ツアー、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、色々なツアーでキャディをさせてもらったんですけど、やはり選手層の厚さ、一人一人のプロ意識の高さ、コースの難しさ、賞金額の大きさ、ギャラリーの多さ、ホスピタリティも、全部がナンバーワン。これが世界一のツアーだっていう、それがPGAツアーだと思います。
同じゴルフの試合なんですけど、ちょっと別物というか。コースの距離の長さだったり、タイガー・ウッズやローリー・マキロイ、ジェイソン・デイだったり、ナンバーワンがしのぎを削っている場所で、ギャラリーの熱狂的な感じとか。試合に出て燃えるというか。キャディとしても、選手、キャディ、ギャラリー全員が一番、最高のトーナメントというんですかね。
アメリカ人独特の熱狂的な応援の仕方は、ちょっと日本人にはない、日本人はどちらかというと奥ゆかしいみたいな、はしゃぎすぎたらどうなんだっていうところもあるんですけど、向こうは酔っ払っていたり、好き勝手なこと言ったり、普段のストレスをウワーッて、吐き出しに来ているところもあったりするので、それにつられてみんなどんどんどんどん盛り上がるみたいな。それに選手が乗ってくるみたいな、そんなところです。
(雰囲気には)慣れましたね。優勝争いとかしていても、最初のころは前後の組でワーワーって、結構すごいんですけど、それに『あっ、やばいな、後ろの組バーディ獲って並ばれたかな』とかありましたけど、段々それに冷静に対応できるようになり、自分たちのプレーに集中できるようにはなりました。
例えばメモリアル(・トーナメント、2014年の松山英樹選手のPGAツアー初優勝)のときは、本当にがむしゃらに一週間やった試合なんですけど、ちょうど前の年にプレジデンツカップがあのコース(ミュアフィールドビレッジGC)であって。なので、来年は絶対にここの試合で優勝争いしたい、活躍したいというのが僕と英樹の中であったので、その目標に向かって、他の選手より経験が有利に働いて、すごくこう、なんだろうな、普段の初戦、PGAツアー1年目の中では特に、他の試合より余裕を持ってやれたというか。
こっそり注目していた選手は、何人かはいるんですけど、そのなかではやはりザンダー・ショフレ選手。web.comツアーから上がってきた1年目に、お母さんが日本人のハーフの方で日本語も喋れて、お父さんもちょっと日本語が解って。そんな感じですごく仲良くなりました。スイングもすごくきれいだし、ボールもめちゃくちゃ飛ぶし。年齢は英樹の一個下だったかな?多分活躍するんじゃないかなって。
2017年のプレーオフシリーズで、頑張って頑張って順位を上げて、最後ツアーチャンピオンシップにギリギリの順位で入り込んだんですけど、そういうときって結構勢いもあるので『ちょっとツアチャン、面白いんじゃないかな』って、見てたんですよ、で、毎日ツアチャンの試合後に最後まで1人で残っていたりとか、試合前とかも楽しそうに練習をやっているのを見て『ああ、良い成績出るだろうな』って見てたら優勝して。なんかこう、見ていて感慨深いというか、滑り込んで闇雲というかがむしゃらにやって、その1年目で新人王を獲って結果が出た彼を見て、彼のゴルフ人生で、良いスタートになったんじゃないかと思いました。
技術的には、僕から見ると体の柔軟性がすごくて、まだ若さもあるとは思うんですけど、身長も僕より低くて170センチくらいかな?なのに300ヤード平気で飛ばしてくるし、どうやったらそんなに飛ぶんだろうなと。その・・・なんかこう、完全にアメリカ人なんだけど、バネが、お父さんとお母さんの良い遺伝子を継いでいるんでしょうね。ポテンシャルがすごいです。
やっぱり柔軟性と瞬発力、この2つは絶対に大事ですね。ローリーだったり、リッキーも、ジャスティン・トーマスもそうですけど、大体その辺はみんな身長一緒くらいなんですけど、みんな瞬発力とか柔軟性とか、体のフィジカルはとんでもないくらいずば抜けてますからね。見ていても、どうやったらそんな速く振れるの?って。おかしくない?って。
英樹の場合は、元々ストレッチもアマチュアの頃から毎日欠かさずやっていましたし、飯田トレーナーとやってきたトレーニングが徐々に徐々に実を結んで、飛距離が伸びたんじゃないかなと思ってますね。
英樹とか同伴競技者を見ていて、『そっからそういう風に寄せれるんだ』みたいなことが毎日あります。その中でも、ずば抜けて技術がすごいのは、タイガー・ウッズのアプローチ、リッキー・ファウラーのバンカーショット、ザック・ジョンソンのアイアンショットの技術、これはもうちょっと別格というか、神ってる、もう必見ですよ。
ザック・ジョンソンでびっくりしたのは、2017年に全米プロも開催されたクエイルホローというゴルフ場があるじゃないですか。上がり3ホールは“グリーンマイル”と言われるPGAツアーの中でも一番難しいとされるところなんですけど、その16番ホールの右のフェアウェイバンカーに、ザック・ジョンソンが入れたんです。
そのバンカーは少しつま先下がりになってまして、あごの後ろにボールが止まってたんですよね。で、そこからグリーンまでは200ヤード近くあって、グリーン奥と左は全部池。右手前はバンカー。そこで『200ヤードくらいあるし、レイアップなんだろうな』って見ていたんですよ。
そしたら、6番アイアンくらい持ち出してきて。どう考えてもあごに当たるんですよ。もう9番とかピッチングでないとあごに絶対当たるんですよ。それをちょっとこう、(グリーン方向ではなく)右に向いてですね。グリーン横のバンカーのさらに右を向いて。隣のホールに向けて打つのかなって思って見てたら、そのつま先下がりのライからとんでもないくらいクリーンにボールを当てて、フェースを返してあごの右側に打ち出して、フックをかけてグリーンに乗せたんです。
(フックボールの打ちにくい)つま先下がりのライから、フックをかけ過ぎたら左には池があるし、手前のあごにも当たるかもしれないし、右はもう隣のホールだし。そんな状況で、この技術ってどんなんだって思って。200ヤードくらいあるんですよ!?びっくりしました。とんでもなかったです。僕がキャディだったら、ピッチング渡して『次90ヤードくらいを乗せようよ』って言っていたと思います。とんでもないところに来たなと思いました。
昨シーズンで驚いたプレーだと、タイガーのベイヒル(アーノルド・パーマーインビテーショナル)6番のロングホール。右手前にピンが切ってたんですけど、右40〜50ヤードくらいの左足下がりのフェアウェイにタイガーがレイアップしてしまって。そのレイアップの場所は完全にミスショットで、もうピンに寄らないだろうってところなんですけど。
その左足下がりのペタペタのフェアウェイのライからですね、バンカー越えて3ヤードのピンのところ。これどうやって寄せるんだろうなって。寄せるんだろうなっていうより、ちゃんと打てるのかな、なんかチャックリして手前のバンカーとか、トップして奥の池とか入っちゃわないかなって思ってたんですけど、やっぱりタイガー・ウッズなんですよね。100回打って1回寄るか寄らないかの、すごいスピンの効いたアプローチを打って、ピンの手前3ヤードのところに落として、ベタピンにつけたんですよ。鳥肌が立ちました。
勝算があって自信があったからそれをやってきた。たくさんのギャラリーがいて、その場面で、そのショットを打つっていうのはもうリスクしかないですし、よっぽど練習してきて自信があったんだと思います。タイガーの影ならぬ努力、センス、そういうものが垣間見れた瞬間でした。その時、一緒に回っていたジェイソン・デイと英樹と3人で苦笑いしました(笑)。
やはりPGAツアーは、池が絡むホールだったり、グリーンの傾斜がすごかったり、トラップがすごい多いんですけど、その中でギャラリーの熱狂に選手も乗せられるというか、興奮して逃げずにそこに攻めてくる瞬間が垣間見れると思うんですけど、そのショットを是非注目して『これは攻めてきたんだな』と、自分を信じて打ってきた、ショット、パットや、その時の選手の表情だったり、ギャラリーの熱狂具合を、是非体感して欲しいですね。
その進藤さんが、CS放送ゴルフネットワークの特別番組「松山英樹を見た証言 特別編~未公開シーンとその後~(16日午前10時初回放送・再放送あり)」のなかで、貴重な経験を踏まえてPGAツアーの魅力についてお話を伺いました。
PGAツアーはすべてがナンバーワン
僕も日本ツアー、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、色々なツアーでキャディをさせてもらったんですけど、やはり選手層の厚さ、一人一人のプロ意識の高さ、コースの難しさ、賞金額の大きさ、ギャラリーの多さ、ホスピタリティも、全部がナンバーワン。これが世界一のツアーだっていう、それがPGAツアーだと思います。
同じゴルフの試合なんですけど、ちょっと別物というか。コースの距離の長さだったり、タイガー・ウッズやローリー・マキロイ、ジェイソン・デイだったり、ナンバーワンがしのぎを削っている場所で、ギャラリーの熱狂的な感じとか。試合に出て燃えるというか。キャディとしても、選手、キャディ、ギャラリー全員が一番、最高のトーナメントというんですかね。
アメリカ人独特の熱狂的な応援の仕方は、ちょっと日本人にはない、日本人はどちらかというと奥ゆかしいみたいな、はしゃぎすぎたらどうなんだっていうところもあるんですけど、向こうは酔っ払っていたり、好き勝手なこと言ったり、普段のストレスをウワーッて、吐き出しに来ているところもあったりするので、それにつられてみんなどんどんどんどん盛り上がるみたいな。それに選手が乗ってくるみたいな、そんなところです。
(雰囲気には)慣れましたね。優勝争いとかしていても、最初のころは前後の組でワーワーって、結構すごいんですけど、それに『あっ、やばいな、後ろの組バーディ獲って並ばれたかな』とかありましたけど、段々それに冷静に対応できるようになり、自分たちのプレーに集中できるようにはなりました。
例えばメモリアル(・トーナメント、2014年の松山英樹選手のPGAツアー初優勝)のときは、本当にがむしゃらに一週間やった試合なんですけど、ちょうど前の年にプレジデンツカップがあのコース(ミュアフィールドビレッジGC)であって。なので、来年は絶対にここの試合で優勝争いしたい、活躍したいというのが僕と英樹の中であったので、その目標に向かって、他の選手より経験が有利に働いて、すごくこう、なんだろうな、普段の初戦、PGAツアー1年目の中では特に、他の試合より余裕を持ってやれたというか。
注目していたのは日本にも縁がある2017年新人王
こっそり注目していた選手は、何人かはいるんですけど、そのなかではやはりザンダー・ショフレ選手。web.comツアーから上がってきた1年目に、お母さんが日本人のハーフの方で日本語も喋れて、お父さんもちょっと日本語が解って。そんな感じですごく仲良くなりました。スイングもすごくきれいだし、ボールもめちゃくちゃ飛ぶし。年齢は英樹の一個下だったかな?多分活躍するんじゃないかなって。
2017年のプレーオフシリーズで、頑張って頑張って順位を上げて、最後ツアーチャンピオンシップにギリギリの順位で入り込んだんですけど、そういうときって結構勢いもあるので『ちょっとツアチャン、面白いんじゃないかな』って、見てたんですよ、で、毎日ツアチャンの試合後に最後まで1人で残っていたりとか、試合前とかも楽しそうに練習をやっているのを見て『ああ、良い成績出るだろうな』って見てたら優勝して。なんかこう、見ていて感慨深いというか、滑り込んで闇雲というかがむしゃらにやって、その1年目で新人王を獲って結果が出た彼を見て、彼のゴルフ人生で、良いスタートになったんじゃないかと思いました。
技術的には、僕から見ると体の柔軟性がすごくて、まだ若さもあるとは思うんですけど、身長も僕より低くて170センチくらいかな?なのに300ヤード平気で飛ばしてくるし、どうやったらそんなに飛ぶんだろうなと。その・・・なんかこう、完全にアメリカ人なんだけど、バネが、お父さんとお母さんの良い遺伝子を継いでいるんでしょうね。ポテンシャルがすごいです。
やっぱり柔軟性と瞬発力、この2つは絶対に大事ですね。ローリーだったり、リッキーも、ジャスティン・トーマスもそうですけど、大体その辺はみんな身長一緒くらいなんですけど、みんな瞬発力とか柔軟性とか、体のフィジカルはとんでもないくらいずば抜けてますからね。見ていても、どうやったらそんな速く振れるの?って。おかしくない?って。
英樹の場合は、元々ストレッチもアマチュアの頃から毎日欠かさずやっていましたし、飯田トレーナーとやってきたトレーニングが徐々に徐々に実を結んで、飛距離が伸びたんじゃないかなと思ってますね。
PGAツアーメンバーたちのスゴ技に驚愕
英樹とか同伴競技者を見ていて、『そっからそういう風に寄せれるんだ』みたいなことが毎日あります。その中でも、ずば抜けて技術がすごいのは、タイガー・ウッズのアプローチ、リッキー・ファウラーのバンカーショット、ザック・ジョンソンのアイアンショットの技術、これはもうちょっと別格というか、神ってる、もう必見ですよ。
ザック・ジョンソンでびっくりしたのは、2017年に全米プロも開催されたクエイルホローというゴルフ場があるじゃないですか。上がり3ホールは“グリーンマイル”と言われるPGAツアーの中でも一番難しいとされるところなんですけど、その16番ホールの右のフェアウェイバンカーに、ザック・ジョンソンが入れたんです。
そのバンカーは少しつま先下がりになってまして、あごの後ろにボールが止まってたんですよね。で、そこからグリーンまでは200ヤード近くあって、グリーン奥と左は全部池。右手前はバンカー。そこで『200ヤードくらいあるし、レイアップなんだろうな』って見ていたんですよ。
そしたら、6番アイアンくらい持ち出してきて。どう考えてもあごに当たるんですよ。もう9番とかピッチングでないとあごに絶対当たるんですよ。それをちょっとこう、(グリーン方向ではなく)右に向いてですね。グリーン横のバンカーのさらに右を向いて。隣のホールに向けて打つのかなって思って見てたら、そのつま先下がりのライからとんでもないくらいクリーンにボールを当てて、フェースを返してあごの右側に打ち出して、フックをかけてグリーンに乗せたんです。
(フックボールの打ちにくい)つま先下がりのライから、フックをかけ過ぎたら左には池があるし、手前のあごにも当たるかもしれないし、右はもう隣のホールだし。そんな状況で、この技術ってどんなんだって思って。200ヤードくらいあるんですよ!?びっくりしました。とんでもなかったです。僕がキャディだったら、ピッチング渡して『次90ヤードくらいを乗せようよ』って言っていたと思います。とんでもないところに来たなと思いました。
昨シーズンで驚いたプレーだと、タイガーのベイヒル(アーノルド・パーマーインビテーショナル)6番のロングホール。右手前にピンが切ってたんですけど、右40〜50ヤードくらいの左足下がりのフェアウェイにタイガーがレイアップしてしまって。そのレイアップの場所は完全にミスショットで、もうピンに寄らないだろうってところなんですけど。
その左足下がりのペタペタのフェアウェイのライからですね、バンカー越えて3ヤードのピンのところ。これどうやって寄せるんだろうなって。寄せるんだろうなっていうより、ちゃんと打てるのかな、なんかチャックリして手前のバンカーとか、トップして奥の池とか入っちゃわないかなって思ってたんですけど、やっぱりタイガー・ウッズなんですよね。100回打って1回寄るか寄らないかの、すごいスピンの効いたアプローチを打って、ピンの手前3ヤードのところに落として、ベタピンにつけたんですよ。鳥肌が立ちました。
勝算があって自信があったからそれをやってきた。たくさんのギャラリーがいて、その場面で、そのショットを打つっていうのはもうリスクしかないですし、よっぽど練習してきて自信があったんだと思います。タイガーの影ならぬ努力、センス、そういうものが垣間見れた瞬間でした。その時、一緒に回っていたジェイソン・デイと英樹と3人で苦笑いしました(笑)。
やはりPGAツアーは、池が絡むホールだったり、グリーンの傾斜がすごかったり、トラップがすごい多いんですけど、その中でギャラリーの熱狂に選手も乗せられるというか、興奮して逃げずにそこに攻めてくる瞬間が垣間見れると思うんですけど、そのショットを是非注目して『これは攻めてきたんだな』と、自分を信じて打ってきた、ショット、パットや、その時の選手の表情だったり、ギャラリーの熱狂具合を、是非体感して欲しいですね。
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