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ZOZOチャンピオンシップは「フジロック」になれるか― ゴルフファンの理想郷を目指して

2019年10月29日(火)午後1:30

 28日に終了した日本初開催となるPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ(10月24日~28日/アコーディア・習志野CC/千葉県印西市)」。25日は荒天のため中止となり、26日はコース整備と安全上の理由から無観客で第2ラウンドが行われる事態となりましたが、予備日の月曜日も駆使して72ホールを完遂。タイガー・ウッズ選手が歴史的なツアー通算82勝目を挙げ、日本の松山英樹選手が最後まで優勝争いに絡む単独2位に入るなど、大いに盛り上がる形で幕を閉じました。

 ZOZOチャンピオンシップは、優勝したタイガー選手のほか、ローリー・マキロイ選手(北アイルランド)、ジョーダン・スピース選手(米)、アダム・スコット選手(豪)など世界トップクラスの選手たちが一堂に会する豪華なフィールドとなり、チケットは約8万枚が事前に完売。22日の練習日では1万1000人、24日は1万8000人、27日には2万2000人のギャラリーが来場するという盛り上がりをみせていただけに、天候の影響で2日間もギャラリーが入場できないという事態は、多くのゴルフファンを落胆させました。

 「初開催の年に天候トラブルで中止」という流れに、あるイベントを思い出しました。それはスポーツイベントではなく、音楽フェスティバルの「フジロックフェスティバル(通称:フジロック)」です。ZOZOチャンピオンシップの雰囲気や今回の流れが、とてもよく似ていると感じました。

 フジロックは、それまで日本では例をみない大型野外音楽フェスティバルとして、1997年に山梨県の天神山スキー場(現:ふじてんスノーリゾート)を会場に開催されました。多数の海外ビッグアーティストが2日間に渡って出演するという豪華さと規模感は、開催前から話題となっていました。

 しかし、参加者の多くが日本初となる大型野外フェスに慣れておらず、移動手段の確保や、雨具はおろか宿泊先も確保していないような人が多数詰めかけるなど、事前の準備不足が露呈。近隣の道路は大渋滞となり、最寄り駅から会場へのシャトルバスが機能しない状態に。そこへ大型台風が直撃し、会場は大混乱となってしまいました。結局2日目は中止となり、運営側にも参加者側にも、多くの課題が残ったイベントとなりました。

 と、ZOZOチャンピオンシップでは、そこまでの大きな混乱はなく、全日程を終了できたことは「成功」といえるでしょう。しかし、天候はやむを得ないとしても、会場までのギャラリー導線は必ずしもスムースとはいえず、携帯電話がほぼ繋がらなかったり、スマートフォンでの撮影マナーの問題など、運営側にも参加者側にも多くの課題がみえました。

 初年度に混乱を極めたフジロックは、前年の反省を活かすため、翌98年は山間部ではなく東京・豊洲でプレイベント的に開催。そしてさらに翌年の99年、新潟県湯沢町の苗場スキー場へ会場を移し、当初の理想であった野外型音楽フェスティバルとしてのスタイルを確立。現在では毎年延べ10万人規模を動員するイベントとして定着しています。

 フジロックが毎年安定した集客を実現しているのは、アーティストのネームバリューだけに頼らない、多種多様なステージや演出を用意することで、毎年全国から音楽好きが集まり、その場所でしかできない体験ができることにあります。運営側はもちろん参加者側の意識も高く「音楽ファンにとっての理想郷」といえる空間や雰囲気を創り出すことに成功したからといえるでしょう。

 ビッグネームに頼るだけの集客では、大会のサステナビリティ(持続可能性)という観点からはリスクが付きまといます。今回は、他の国内開催のゴルフトーナメントと比較しても非常に高額なチケットが完売しましたが、これから先も毎年タイガーが来るという保証はありません。

 今回のZOZOチャンピオンシップは、「PGAツアー初開催」というニュース性と、名だたる選手たちの出場によって、全国からゴルフファンが集まりました。初日のスタートホールでは、どの選手にもまるで最終日最終組のような声援が送られ、プレーひとつひとつに歓声があがり、それによって選手たちもノッてくるという、理想的なトーナメントの雰囲気が出来上がっていました。それはまさに、選手やギャラリー、ゴルフが大好きな人たちにとっての「理想郷」のようでした。

 来年以降も、ZOZOチャンピオンシップは続いていきます。今年開催したことで、課題ばかりでなく多くのノウハウも積み上がったことでしょう。主催のZOZO社は、高額なチケットを完売させたことでゴルフトーナメント興行としてのビジネス的な軸を作ることができました。アコーディア・習志野CCも世界水準のコースセッティングを作り上げるとともに悪天候による様々なトラブルを乗りきり、地元の自治体や交通機関、メディア、ギャラリーも、「PGAツアーのスタンダード」を肌で感じ体験することができたと思います。

 出場枠を得たJGTO(日本ゴルフツアー機構)の選手たちにとっては、正直厳しい現在地を確認する場になったかもしれません。しかし目指すべきレベルは見えたはずで、PGAツアーの選手たちが多数を占めるフィールドのなかで、国内ツアー選手へ向けられる大きな声援は力になったでしょう。

 そして何より、ZOZOチャンピオンシップは、タイガー・ウッズのツアー82勝目という歴史的偉業の舞台になったという価値と重みが生まれました。

 選手たちは称賛されるようなプレーとファンサービスをみせて、ギャラリーはその価値にチケット代を払い、運営側はその舞台を用意する。来年も再来年も、その先もずっと、この大会が続き、文化として定着していくことが、日本のゴルフ界全体を盛り上げていくことに繋がると強く感じた1週間となりました。
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2019-20 ZOZOチャンピオンシップ
10月24日(木)~10月27日(日)

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