海外男子
責任感の強さと勝利への強い思いがみえた松山英樹が「苦渋の決断」を決めるまで
2018年2月16日(金)午後9:00
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2018年のウェイストマネジメントフェニックスオープンは、開幕するまでその主役は間違いなく松山英樹だった。勝てば1964年のアーノルド・パーマー以来となる3連覇、パワーランキング(優勝予想)では堂々の1位、予選ラウンドはこの大会でプレーオフを戦ったリッキー・ファウラーとウェブ・シンプソンとのペアリング。日本国内はもちろん、現地アメリカでも大きな注目を集めていたことは明らかだった。
しかし2日目スタート前、前日に痛めた左手が回復せずまさかの棄権。その決断は、日本だけでなく世界のゴルフ界に衝撃を与えた。その日、松山に一体何が起きていたのか。プロゴルファーの佐藤信人氏、ツアープロコーチの内藤雄士氏、プロキャディの杉澤伸章氏が、ゴルフネットワークの番組「松山英樹を見た証言~2018フェニックスオープン編~」で振り返った。そこで見えてきたのは、松山英樹の責任感の強さと、この大会にかける強い思いだった。
2018年最初の試合となるセントリートーナメントオブチャンピオンズを4位Tで終え、調子を上げてTPCスコッツデールに乗り込んだ松山。周囲から3連覇への大きな期待がかけられているにも関わらず、現地オンコースリポートに付いた杉澤氏によると、開幕前の公式記者会見や、1日目を迎えたときの様子は、笑顔もみられてとてもリラックスしていたという。
異変が起きたのは、前半13番Par5のティーショット。手を離した素振りはいつもの松山の動きにも見えたが、この時に痛みがはしっていた。セカンドショットは、グリーンはおろかフェアウェイもみえないベアグラウンド。しかも、そこはスパイクの歯も刺さらないほどの硬い地面。松山はそこからウッドでグリーン近くまで運び、アプローチも寄せてバーディを奪う。しかし、砂漠地帯で固い地面のTPCスコッツデールは、結果的に松山の怪我を悪化させていったのかもしれない。
その後、14番で飯田トレーナーにテーピングで応急処置をしてもらい、前半9ホールは2バーディノーボギー。スコアカードだけみれば順調に見えるが、周囲の期待と、それに応えようとしていた松山自身の強い気持ちもあってか、痛みを感じにくかったのかもしれない。次第に、手を気にする仕草が増えていく。
バックナインに入ると、1番、2番で連続ボギーを喫する。佐藤氏は「後半は探りながらのプレーだったのかもしれない。なんとかやり過ごして、治療して、明日やる方法を考えていたのでは」と推測している。3番のバーディでひとつ取り返すも、6番のセカンドショットでは明らかな苦悶の表情をみせ、いまにしてみれば深刻な状況だったといわざるを得ない。
この時、スイングに与えていた影響について、ツアープロコーチの内藤氏は、特にドライバーに出ていたと指摘する。「ドライバーでボールを掴まえるためには、しっかりとフェースローテーションさせる必要がある。しかし(痛みによって)無意識に脳が嫌がって、ローテーションが小さくなりボールが掴まりきらず、右に曲げていた」。
痛みに耐えながらなんとか初日を2アンダーの69でまとめた松山だったが、翌日の練習場で杉澤氏はある違和感を感じたという。「松山選手のキャディバッグを置く場所が、普段ならコースと練習グリーンの導線に置くところが、クラブハウスと練習グリーンの導線に置いていた。勘ぐり過ぎかもしれないが、朝の段階でよくなかったのかもしれない」。
2日目も普段のルーティーン通り、パッティング練習からスタート前の準備をしていた松山だったが、ウェッジを1球打ったところでショット練習を止めた。そして、同組のシンプソンとリッキーを探し出して挨拶をし、3連覇がかかった2018年のウェイストマネジメントフェニックスオープンを棄権した。
この棄権は、単なる棄権ではない、最後の最後まで粘ったうえで決断せざるを得ないものだったと、そばで一部始終を見ていた杉澤氏はいう。1日目を終えたあと、松山はすぐ練習場に向った。そこでは、左手が痛くない打ち方、あるいは痛い打ち方を確認していたようで、2日目のために、棄権しないために、1分1秒を無駄にしないその姿勢は、松山のこの大会にかける強い思いが現れていた。
2月16日現在、松山の復帰の目処はまだ立っていないようだが、海外メディアからは「深刻な状況ではないようだ」とする報道もあった。人一倍責任感が強い松山にはあまりにも酷だった「苦渋の決断」が、この先報われる結果になることを願いやまない。
しかし2日目スタート前、前日に痛めた左手が回復せずまさかの棄権。その決断は、日本だけでなく世界のゴルフ界に衝撃を与えた。その日、松山に一体何が起きていたのか。プロゴルファーの佐藤信人氏、ツアープロコーチの内藤雄士氏、プロキャディの杉澤伸章氏が、ゴルフネットワークの番組「松山英樹を見た証言~2018フェニックスオープン編~」で振り返った。そこで見えてきたのは、松山英樹の責任感の強さと、この大会にかける強い思いだった。
2018年最初の試合となるセントリートーナメントオブチャンピオンズを4位Tで終え、調子を上げてTPCスコッツデールに乗り込んだ松山。周囲から3連覇への大きな期待がかけられているにも関わらず、現地オンコースリポートに付いた杉澤氏によると、開幕前の公式記者会見や、1日目を迎えたときの様子は、笑顔もみられてとてもリラックスしていたという。
異変が起きたのは、前半13番Par5のティーショット。手を離した素振りはいつもの松山の動きにも見えたが、この時に痛みがはしっていた。セカンドショットは、グリーンはおろかフェアウェイもみえないベアグラウンド。しかも、そこはスパイクの歯も刺さらないほどの硬い地面。松山はそこからウッドでグリーン近くまで運び、アプローチも寄せてバーディを奪う。しかし、砂漠地帯で固い地面のTPCスコッツデールは、結果的に松山の怪我を悪化させていったのかもしれない。
その後、14番で飯田トレーナーにテーピングで応急処置をしてもらい、前半9ホールは2バーディノーボギー。スコアカードだけみれば順調に見えるが、周囲の期待と、それに応えようとしていた松山自身の強い気持ちもあってか、痛みを感じにくかったのかもしれない。次第に、手を気にする仕草が増えていく。
バックナインに入ると、1番、2番で連続ボギーを喫する。佐藤氏は「後半は探りながらのプレーだったのかもしれない。なんとかやり過ごして、治療して、明日やる方法を考えていたのでは」と推測している。3番のバーディでひとつ取り返すも、6番のセカンドショットでは明らかな苦悶の表情をみせ、いまにしてみれば深刻な状況だったといわざるを得ない。
この時、スイングに与えていた影響について、ツアープロコーチの内藤氏は、特にドライバーに出ていたと指摘する。「ドライバーでボールを掴まえるためには、しっかりとフェースローテーションさせる必要がある。しかし(痛みによって)無意識に脳が嫌がって、ローテーションが小さくなりボールが掴まりきらず、右に曲げていた」。
痛みに耐えながらなんとか初日を2アンダーの69でまとめた松山だったが、翌日の練習場で杉澤氏はある違和感を感じたという。「松山選手のキャディバッグを置く場所が、普段ならコースと練習グリーンの導線に置くところが、クラブハウスと練習グリーンの導線に置いていた。勘ぐり過ぎかもしれないが、朝の段階でよくなかったのかもしれない」。
2日目も普段のルーティーン通り、パッティング練習からスタート前の準備をしていた松山だったが、ウェッジを1球打ったところでショット練習を止めた。そして、同組のシンプソンとリッキーを探し出して挨拶をし、3連覇がかかった2018年のウェイストマネジメントフェニックスオープンを棄権した。
この棄権は、単なる棄権ではない、最後の最後まで粘ったうえで決断せざるを得ないものだったと、そばで一部始終を見ていた杉澤氏はいう。1日目を終えたあと、松山はすぐ練習場に向った。そこでは、左手が痛くない打ち方、あるいは痛い打ち方を確認していたようで、2日目のために、棄権しないために、1分1秒を無駄にしないその姿勢は、松山のこの大会にかける強い思いが現れていた。
2月16日現在、松山の復帰の目処はまだ立っていないようだが、海外メディアからは「深刻な状況ではないようだ」とする報道もあった。人一倍責任感が強い松山にはあまりにも酷だった「苦渋の決断」が、この先報われる結果になることを願いやまない。
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