2年に1度開催されている世界選抜と米国選抜の国の名誉とプライドをかけた戦い「ザ・プレジデンツカップ」。両チームの代表選手12名がマッチプレー（3日間はダブルス、最終日はシングルス）で争う団体戦。欧州選抜と米国選抜の対抗戦「ライダーカップ」が開催されない年に、欧州を除く世界各国の有力選手が米国選抜と戦う団体戦として1994年に産声を上げた。今年で12回目を迎えるが、世界選抜が勝利したのは丸山茂樹が5戦全勝でMVPを獲得した1998年大会のみで、過去の対戦成績は米国選抜の9勝1敗1分けと世界選抜が苦戦を強いらている。「打倒米国」は世界選抜にとっての至上命題でもある。そんな圧倒的強さを誇る米国選抜をあと一歩のところまで追い詰めたのが前回の2015年大会だ。この年は1ポイントを争うプレジデンツカップ史に残る大接戦となった。

　アジア初となる韓国開催となった2015年大会、世界選抜にはこの年の「全米プロゴルフ選手権」でメジャー制覇を成し遂げたジェイソン・デイを筆頭に、アダム・スコット、ルイ・ウーストハイゼンら実力者に加えて、日本からは松山英樹が2大会連続で出場。さらにキャプテン推薦で地元韓国のべ・サンムンがメンバー入り。対する米国選抜は「マスターズ」・「全米オープン」のメジャー2連勝と米ツアー年間王者のタイトルを手にしたジョーダン・スピースら世界ランキング上位者がずらり。

　米国有利の下馬評通り、大会初日は米国選抜が4勝1敗と圧勝。松山はスコットとペアを組んで出場したがバッバ・ワトソン＆J.B.ホームズの飛ばし屋コンビに完敗。3ポイントビハインドとなった世界選抜だが、2日目に巻き返しを図り1ポイント差まで詰める。2日目に出番の無かった松山だが、応援に回ったことで「ものすごいプレッシャーの中でトッププレーヤーでもミスすることはある。それを目の当たりにしたことで、自分自身を追い詰めすぎるのも良くないと気付いた」と3日目以降に奮起する。3日目は米国、世界選抜共に一進一退の攻防に。松山＆べ・サンムン組が1勝1分けと活躍したこともあり、1ポイント差は変わらず勝負の行方は最終日のシングルス戦に。

　12マッチが行われる最終日、第2試合のスコット、第4試合の松山が勝利するなど前半は世界選抜ペース。ところが、ゴルフ大国の威信にかけて米国が意地を見せる。フィル・ミケルソン、ザック・ジョンソンらベテラン勢が勝ち星を上げ、最終マッチを残して両チームのポイントは同点に。勝利への1ポイントを託されたのは共にキャプテン推薦で選ばれたべ・サンムンとビル・ハース。

　3日目まで2勝1分けと負け知らずでムードメーカーでもあったベ・サンムンだったが最終日はハースを前に苦戦を強いられ、ハースの1UPで迎えた最終18番。緊張と重圧から3打目のアプローチで痛恨のミスを犯し、膝から崩れ堕ちた。大会終了後、ベ・サンムンは「（勝敗の行方が最終マッチになっていることは）16番ホールで知ってプレッシャーを感じて、最終ホールではチップショットを失敗してしまったが、いつの日かプレジデンツカップに出場して米国選抜に勝ちたい」と一打の重みを語った。世界選抜を率いたニック・プライス主将は「チーム全員がベ・サンムンを気の毒に思っている。彼の18番のアプローチショットが、我々が敗れた原因ではない。初日からの様々なミスが積み重なった結果だ」とコメントした。

　最後まで何が起こるかわからないマッチプレーの団体戦。世界のトッププレーヤーがチームのため、一打に想いを込める。今年はアメリカのニュージャージー州にある「リバティナショナル・ゴルフクラブ」で開催される。世界選抜にとってはアウェイでの戦いとなるが、今やPGAツアーを代表する選手へと飛躍した松山英樹がいる。過去2度の大会成績は3勝4敗2分けの松山だが、前回大会終了後には「（2015年のプレジデンツカップは）プレッシャーのかかった場面でも上手くプレー出来た。特に最終日はショットもパットも良かった」とチーム戦の経験値も充分。前回の雪辱を晴らすことはできるのか、松山を中心とした世界選抜の戦いに注目だ。